2017年7月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

« 水墨画が完成しました! | トップページ | 林檎りんごリンゴ!〜七折農園のこと »

りろ書房の御夫妻〜宮沢賢治の本を借りる〜3「どんぐりと山猫」

2015年
11月12日(木)
8日夜8時NHK「日曜美術館」で「正倉院展」が再放送されると知り、あわててりろ書房の川西夫妻宅を訪れました。
りろ書房のブックカバーのモチーフが、映るからです。

Photo_4
テレビ画面より。

奈良時代インドから来た高僧も座ったという、花擅(かせん)。
私は先週の日曜朝の本放送で偶然番組を見て、
あ!りろ書房のブックカバー
と気がつきました。りろ書房の川西さんから「正倉院の宝物なんですよ、これは」と聴かされていたからです。
Photo_6                          りろ書房のブックカバー。
閉店の日に「皆さんご自由にお持ち帰りください」と川西さんがお客さんに声を掛けていたのを思い出します。今あらためて見ると、なんて格式があって素敵なカバーでしょう。

りろ書房の御夫妻はお元気でした。
長いことお借りしていた賢治の本2冊のうち、1冊をお返ししました。おばさんにはフィッシャー・ディスカウのCD「冬の旅」をお貸ししました。

お孫さんが御結婚されたという、嬉しいニュース!
そして川西さんから、またも「賢治全集第八巻」をお借りしました。嬉しい嬉しい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2冊目の賢治の本について、急いで続きを書かねばなりません。
「山と雲の旅」金子民雄 著(れんが書房新社)
実は「在京大迫人の集い」にて浅沼利一郎さん(早池峰と賢治の童話館館長)に、この本と著者の金子民雄さんのことを伝えたら、
知ってるよ!金子さんだけだもの、実際早池峰山に登って(賢治について)書いたのは。
と、良くご存知でした。その本も何冊も持っているそうです。偶然にびっくり。と、同時に納得しました。常々浅沼さんから伺っていた「早池峰山と宮沢賢治」の話と、金子氏の著作の内容が、ぴったり重なっていたからです。
宮沢賢治についての研究書は膨大です。私はまだ10冊も読んでませんが、金子氏の「山と森の旅」と「山と雲の旅」は、実際に花巻や岩手のあちこちに足を運んで、賢治の足跡を辿っているので、なかなか説得力があります。
そんな本をりろ書房の川西さんに教わるなんて!

では、以下引用が長くなりますが、「早池峰山と賢治」の繋がりをよく書かれています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

山と雲の旅金子民雄 著

山の足音「どんぐりとやまねこ」

(※以下、茶色い文字は「山と雲の旅」からの引用。

青い文字は、その中で金子氏が宮沢賢治の「どんぐりとやまねこ」から引用した箇所。)

 この作品にもきっとどこかわたしの知らないところにモデルの土地があって、風だけがそれを知っているにちがいないと思うのだった。だが、それが一体どこにあるのか皆目見当もつかない。それからわたしのあてどない旅が始まった。
(中略)

 しかし、とうとうこの童話の舞台だった土地がつきとめられるときがきた。それはわたしではなく、亀井茂氏によってだった。亀井氏の論考(「早池峯」所収)が現れなかったら、わたしは諦め、知らずに過してしまったかもしれないからである。舞台は早池峰山のすぐ山麓、岳部落周辺であった。氏の論考は岩手県のあるローカル誌に載ったのであるが、わたしには海抜高度が500メートルを越え、1000メートルに近いところが舞台になるとは、とても想像できなかった。(中略)

 早池峰山なら、親しい山だ。(中略)ともかく現地探訪する前にこの童話のストーリイの前半部分だけでもたどっておくことにしよう。はがきをもらった少年は、胸をわくわくさせながら山猫に会いに出かけた。

 けれども、一郎が眼をさましたときは、もうすつかり明るくなつていました。おもてにでてみると、まわりの山は、みなたつたいまできたばかりのやうにうるうるもりあがつて、まつ青なそらのしたにならんでいました。一郎はいそいでごはんを食べて、ひとり谷川に沿つたこみちを、かみの方へのぼつて行きました。

一郎が自宅(?)で目を覚した頃には、陽がすでに昇っていたようである。家の外に出てみると、
「まわりの山は、みなたつたいまできたばかりのやうにうるうるもりあがつて」
いたというから、小学校五年生ぐらいのこの少年の家は、山の中の部落らしいことがおぼろげながら浮んでくる。

(中略)そして、次の数行は、この童話の舞台を推定する上でほとんど唯一の資料となるところだ。

 一郎がすこし行きますと、そこはもう笛ふきの滝でした。笛ふきの滝といふのは、まつ白な岩の崖のなかほどに、小さな穴があいていて、そこから水が笛のやうに鳴って飛び出し、すぐ滝になつて、ごうごう谷におちているのをいふのでした。

 一郎は滝に向いて叫びました。

「おいおい、笛ふき、やまねこがここを通らなかつたかい。」滝がぴーぴー答へました。

「やまねこは、さつき、馬車で西の方へ飛んで行きましたよ。」

「おかしいな、西ならぼくのうちの方だ。けれども、まあ少し行つてみやう。ふえふき、ありがたう。」

滝はまたもとのやうに笛を吹きつづけました。

 ここに現れる〈笛ふきの滝〉というのは、賢治の造語のように思われがちであるが、実は実在する滝の名をもじったものである。(中略)もし、この〈笛ふきの滝〉が賢治の創作ではなく、あくまで事実を踏まえてのものだったとしたら、この谷川が早池峰山の南山麓から流れ出る岳川である、という事実はゆるがない。すでに亀井氏が推論されている通りだ。(中略)

 北上川の左手、いわゆる北上山地に聳える早池峰山(1913メートル)に行くには、東北本線の花巻駅から北へ2つ目の小さなローカル駅、石鳥谷からバスに乗るのが早い。(※まだ東北新幹線がなかった)わたしのように早池峰山そのものよりもその西山麓、とくに河原坊から岳部落周辺を歩いてやろうという魂胆のものには、このルートが万事に無駄がない。

金子氏は、大迫町から内川目〜そして早池峰山麓の岳部落までの道程を丁寧に書いているが、そこは省略します。

 「どんぐりと山猫」の舞台がこの岳部落なら、主人公一郎少年の家は、きっとこの狭い谷間の家々のどれかだったのであろう。賢治が地質調査の折、ちょっと立ち寄って休息した家にでもいた少年だったのかなと、勝手な空想を楽しんだ。岳部落が山間にありながらじめじめした暗さを感じさせないのは、南側の山が比較的低く、谷川が平坦なところを流れ、明るいからであろう。一郎が朝、目を覚したらまわりの山がみないま出来たばかりのようにうるうる盛り上って、真っ青な空の下に並んでいたというのは、谷川の南側の山並みを指していたのかもしれない。

そして金子氏は、賢治さんがなぜ岳部落を童話の舞台に選んだのか、推理してます。

賢治が訪れた大正時代のこのあたりは、まさに想像を越えていたであろう。彼がなぜ、あの童話の舞台にこんな辺鄙な場所を選ぶ気になったのか、道々考えてみたがどうもわたしには見当がつきかねた。(中略)賢治はむしろ人のめったに訪れない場所ということで、わざわざモデルに選んだのかもしれない。(中略)

 1918(大正7)年、賢治はまだ22歳のとき、稗貫郡の地質調査の依頼をうけて郡内をしらみつぶしに歩いた。その折、大迫のどのあたりをたどったかを知ることができたら、童話の舞台装置がかなり明確になるはずである。しかし、これが易しそうで仲々むずかしい。あるのは彼がフィールド・ワークを整理して製作した地質図とその解説書のみである。ただわずかに、現地から父親宛に短い調査予定を報じたはがきがあるだけだ。しかし、これは貴重な手掛かりを与えてくれる。同年9月21日、大迫からの父親宛はがきでは行動予定をこう記している。

ニ二日 大迫ー立石ー鍋屋敷ー岳。

ニ三日 岳から河原坊を経て早池峰山ー中岳ー鶏頭山と峰づたいで七折滝へ出、岳へもどる。

ニ四日 岳ー天王ー覚久廻ー狼久保。

ニ五日 狼久保ー久出内ー名目入ー長野峠・折壁峠ー折壁。

ニ六日 折壁ー覚久廻ー小呂別ー黒沢ー立石ー大迫。

これは予定通り無事済したものらしい。地名の列挙だけであるが、五万分の一地形図〈大迫〉と〈早池峰山〉で全てカバーされ、賢治の歩いたコースは一目瞭然といえる。

それから金子氏は、童話「どんぐりと山猫」に描かれたコースは、こうだろうか、ああだろうかと深く考察しています。そして、〈笛ふきの滝〉は実際岳川にある〈笛貫ノ滝〉に違いない、と推論します。

Photo

「山と雲の旅」より金子民雄氏のスケッチ「笛貫ノ滝」

Photo_2                同じく金子氏のスケッチ。水が岩を穿った(笛貫ノ滝)

まさに「ぴーぴー」と音が聞こえそうな穴です。

私はこれだけ丹念に早池峰を歩いてみたことはありません。

金子氏の著作の話をしたら、浅沼利一郎氏が、

「こんな本を作ったんだよ!山編はあるけど、今回河編を作ったんだ。部数が少ないけど、あげるよ。」

と、プレゼントしてくれました。

Photo_3

「金子さんが見たら喜ぶだろうね。」と、浅沼さん。

浅沼さんが長年行っている、「宮沢賢治の童話や詩をたどる早池峰山ツアー」を、まるごと本にしたようなものです。賢治の童話や詩も早池峰山の風景と一緒に載っていて、とても良いガイドになっています。

これにはDVDがついていて、映像を見ながら学ぶ、学習教材でもあるのでした。

Photo_4

Photo_5

Photo_6

このような本が私の手元に届いた偶然と縁を深く感じます。

りろ書房の川西さんにも、「銀河の森の河物語」をぜひお見せしなければ。

(この項終わり)

« 水墨画が完成しました! | トップページ | 林檎りんごリンゴ!〜七折農園のこと »

出会い」カテゴリの記事

大迫」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1167966/62434374

この記事へのトラックバック一覧です: りろ書房の御夫妻〜宮沢賢治の本を借りる〜3「どんぐりと山猫」:

« 水墨画が完成しました! | トップページ | 林檎りんごリンゴ!〜七折農園のこと »