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「凶悪」は、久々の骨太映画

11月23日(土)
世の中でいい人を演じていると、だんだん苦しくなってくる。
娘の学校のPTAを引き受けていた時もそうだったし、今もそうだ。
+(いい人)の振り幅がグーンと振り切れると、
「こんなの自分じゃないぜ!」とばかりに、−(悪い人)にグン!と自分を戻したくなる。
思い切り残酷な映画や小説に向かいたくなる。
それで、昨日は仕事を早引けして新宿へ映画を見に行った。
「凶悪」。テアトル新宿にて、最終日の最終回。

飲みに行くわけでもないのに、夜の新宿に向かうと気分が高揚してくる。

昨日は小田急線の鶴川駅で事故があったせいでダイヤが乱れていた。ホームにすべりこんだ回送電車が目の前で急行電車に切り替わった。
早めに出たのに、映画館は滑り込みセーフ。

映画「凶悪」(白石和彌監督)は、実話が元になっている。

雑誌「新潮45」に連載されたルポルタージュだ。

Photo

編集部に一人の死刑囚から手紙が届く。

まだ明るみになっていない殺人事件3件に自分は関わっている。

それらは、すべて「先生」と呼ばれる男の指示の元に実行した。

今もシャバでのうのうとしている「先生」が、俺は許せない。

記者さん、これを記事にしてほしい。

という趣旨の、およそ信じられないような驚愕の事実が綿々と綴られていた。

不動産ブローカーとヤクザがからんだ殺人事件はありふれている、と

編集長からストップがかけられるが、主人公の記者・藤井は

単独で死刑囚・須藤の手紙のウラをとるべく、コツコツと北関東の事件現場を調べ歩いた。

すると、ピースが1つ1つ埋まるように、須藤の言葉と事実が符合してゆく。

映画は、ドキュメンタリーのように、淡々と始まる。編集部で雑多な仕事に追われる主人公・藤井(山田孝之)。家庭では妻(池脇千鶴)が認知症の母(吉村実子)の介護に疲れている。ある日編集長から「死刑囚から手紙が届いているから読んでみて」、と渡される。死刑囚・須藤(ピエール瀧)が指示した場所は、荒涼として何もないかに見えたが、聞き込みを続けるうちに、事件の風景が見えてきた。そして映画は事件当時の陰惨な情景に切り替わる。

ドキュメンタリーから、エンターテインメントに切り替わる瞬間だった。見事。これからはグイグイと残酷なシーンに引き込まれる。

ピエール瀧は、顔がいい。好きな映画には、大抵彼が出演している。温厚な役が多いが、こんなに振り切れた「悪役」は初めて。でもチラリと顔をのぞかせるまっすぐさ、素朴さ。それは、監督がピエール瀧に当て書きしたニュアンスだろう。おかげで、殺人者で死刑囚の須藤に一滴の人間味が感じられた。リリー・フランキーは「ぐるりのこと。」では、裁判所の似顔絵描きだったが、今回は裁かれる方。柔らかい物腰、上品な語り口の裏に、冷たい悪を隠し持つ男・「先生」。彼は本当にそういう人なんでは?と思わせるほど、自然に見える。彼は殺人を楽しんで実行する。一方家庭があり、良き父でもあるという複雑さ。難しい役に違いないが、醸し出す雰囲気や声や存在で「先生」を見事に造形していた。

主人公の記者・藤井は山田孝之。予算も少ない、タイトな現場だったこの映画。藤井が取材を重ねてゆくにしたがって、気持がどんどん変化してゆく様を、山田は細かく検討して、少しずつ変化を加えて行ったという。また、プロの俳優ではないピエール瀧やリリー・フランキーとの共演も楽しみにしていた、と語っていた。アクションが少ない、厳しい役だったと思うが、事件に魅せられてのめり込んで「狂気」を帯びてゆく藤井を見事に演じていた。

藤井の妻・洋子役の池脇千鶴。認知症の母と対峙する時の疲れた表情。この人の凄い所は、「平気でなりふり構わず」になれること。「パーマネント野バラ」でも、可哀想なほどなりふり構わなかった。彼女の存在が、我々観客(や原作の読者)に近い。彼女の視点が入ったことで、この映画の奥行きが深まった。

共演した俳優陣や監督が絶賛していたのが、殺される老人・牛場悟役のジジ・ぶぅ。

本当の老人に見えるが、彼は1956年生まれの50代。確かに、ジジ・ぶぅがこの映画最大の功労者かもしれない。

Photo_2

ジジ・ぶぅ。

http://wahahahompo.co.jp/member_profile/jijiboo.pdf

他に2人の老母役の吉村実子白川和子の起用が嬉しい。

「凶悪」。

きちんとした実力派俳優を配した、誠実に作られた、面白い映画。

もう上映館は少なくなっているけれど、来年の2月に川越の映画館で上演されるらしい。

DVDより、映画館で見て欲しい「凶悪」です。

Photo_3

                   パンフレットも「凶悪」。

映画「凶悪」→http://www.kyouaku.com/

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