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美しさは厳しさの中にしかない

「劔岳 撮影の記」
「これは撮影ではない、苦行です」
木村監督の言葉に身を引き締めるスタッフたち。彼等がまず最初におこなったのは、重い撮影機材を背負って、実際にキャンプを体験すること。荷物の出し入れ、明治時代当時のテントを張るなど、とまどうことばかり。

木村監督がこだわったこと。
1.撮影は「順撮り」でおこなう。
2.たとえば「天狗平」の場面は「天狗平」で、「劔岳南壁」の場面は「劔岳南壁」で実際に撮る。
3.最高の天気を待つ。

1.は、台本通りに順に撮っていくことだが、通常はスケジュール,予算.セットの準備などの都合上、あまりやらない方法らしい。だが、木村監督は特にこれにこだわった。順撮りで撮ったことで、俳優たちが柴崎芳太郎や宇治長次郎の気持ちになじんでいき、山にもなじんでいった。演技が、演技ではなく、まるで明治時代の彼等が乗り移ったように自然だった。それに、最初はつるっとした顔だった浅野忠信と香川照之に、撮影が進むにつれて「山男らしい」髭がたくわえられてくる。監督は、それも楽しみにしていたようだ。

2.は、この映画の最大の特徴といえるかもしれない。明治時代の測量隊たちを描くには、自分たちも実際にそこに立って撮ることしかないと、監督は強い信念があった。それはへたをすると「死」にもつながる厳しいこと。香川照之が、「正解は9時間でした。9時間登って、今日は2カットでした」と笑顔でいう言葉。俳優たちもスタッフも「木村監督だからしょうがないな」と、しっかり受け止めているのが凄い。こんな厳しい「行軍」を納得させる木村監督。彼の長いキャリアの裏付けがあっての強い信念と、リーダーシップ。みんなが監督を尊敬し「この人についていきたい。」と思わせる力。この人だからこの映画はできたんだな、と実感した。

3.順撮りで撮りながら、予算内、期間内で撮影する。そう決めたからには、監督はいやがおうにも天気に敏感だった。一番最初の撮影シーン。明治時代の富山駅。柴崎芳太郎と案内人の宇治長次郎が駅で初めて出会う大事なシーンだ。スタッフの準備も整い、いざ本番!というところで、何故か木村監督は車でブォーッとどこかへ行ってしまった。そこは離れた田んぼ。雲が晴れたので、急遽別のシーンとることになったのだ。急いで明治時代の駅のセットを全部ばらして田んぼに向かうスタッフと俳優。田んぼを眺めながら柴崎と宇治が握り飯をほうばるシーンが撮影された。

山の撮影に入り、夏山から秋、そして冬へと季節が変わると天候の変化が激しくなる。寒い山の上で晴れ間を3時間待って晴れなかったので、また山を降りる・・・なんてことが繰り返しある。(途中で頭がおかしくなったり、キレたりしないんだろうか?)

浅野忠信と香川照之が後にインタビューで答えている。

香川:どんな場所でも2回撮りに行っているんですよ。映画の神様は1回目だと、いい条件を与えてくれない。徒労の1回目を経験して2回目に行くと「まあ、いいだろう」と凄い自然の風景を与えてくれるんですよ。

浅野:監督は2回目で、凄い画を引き当てるんですよ。

     (「劔岳 点の記 オフィシャルガイドブック/扶桑社」より)

柴崎芳太郎と宇治長次郎が二人だけで劔岳を登ったときに、見せる雲海。富士山も見える!

「これは本物の風景なの?夢ではないの?」と疑うほどの素晴らしさだった。涙がでそうなほど。

「美しさは厳しさの中にしかない」

というのが木村大作監督の持論。この言葉が「劔岳 撮影の記 -標高3000メートル、激闘の873日-」を観て、観客の我々も実感できた。スタッフ、俳優たちは「劔岳 点の記」に参加したことが大いなる勲章だと思う(羨ましい)。

あと、どうしても付け加えたいのは、山岳ガイドの多賀谷治氏のこと。現代の宇治長次郎と言ってもいい彼の存在なくしては、これだけ厳しい映画はできなかっただろう。飄々とした彼の語り口がとても印象的だった。木村監督は彼に敬意を表してクレジットに「山岳監督」という肩書きを記した。

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